フリーランスが1日にいくら稼ぐ必要があるか、実際に計算してみた

自分が1日にいくら稼ぐ必要があるか、計算したことはありますか。福島で映像制作をする私が実際に使っている3ステップの計算方法を、固定費に入れる項目、税金の扱い、記入例つきで書きます。ほとんどの人が間違える稼働日数の数え方も説明します。

フリーランスが1日にいくら稼ぐ必要があるか、実際に計算してみた

自分が1日にいくら稼ぐ必要があるか、計算したことはありますか。

私は独立して数年、一度もありませんでした。目の前の仕事が高いのか安いのか、感覚でしか分かっていませんでした。

計算すると、答えははっきり出ます。そして多くの場合、いまの単価では足りていません。それを知っているかどうかで、案件を受けるときの会話が変わります。

この記事は、フリーランスとして数年やっているけれど、自分の必要額を出したことがない人へ向けたものです。経理が苦手でも進められるように、迷いそうなところは全部「こう決めてください」と書きます。

その前に、これだけ用意してください

計算を始める前に、手元に置いてほしいものが3つあります。

  • 通帳とクレジットカードの明細(1か月分でいいです)
  • 去年の税金の納付書(所得税、住民税、国民健康保険。手元になければ、だいたいの金額で構いません)
  • 先月のカレンダー

会計ソフトを使っている人は、そこから見ても大丈夫です。ただ、毎月同じ金額で引き落とされているものを探すだけなので、明細を眺めるのが一番早いと思います。

ステップ1:毎月出ていくお金を書き出す

固定費とは、仕事をしてもしなくても毎月出ていくお金のことです。

明細を見ながら、毎月同じように引き落とされているものを拾ってください。映像や制作の仕事なら、だいたいこのあたりです。

  • 事務所や作業場の家賃(自宅で作業しているなら、ここは空欄で構いません)
  • 通信費(回線、携帯)
  • 機材のローン、レンタル、保守
  • 保険料
  • 車の維持費、駐車場代
  • 編集ソフトやクラウドなどのサブスク
  • 会計ソフト、税理士費用

参考までに、私の場合は事業の固定費が月8万円から10万円のあいだで動きます。年間にすると96万円から120万円です。

自宅で作業している人へ(迷わないための決め打ち)

自宅兼作業場だと、家賃や電気代を事業と生活のどちらに入れるか迷います。確定申告では按分(あんぶん)して分けますが、この計算では按分しないでください。

家賃、光熱費、携帯代は、全額まとめて次の「生活費」に入れてください。

理由は単純で、この計算は税務署に出すものではなく、自分の判断基準を作るためのものだからです。二重に数えさえしなければ、どちらに入れても答えは同じになります。迷う時間のほうがもったいない。

生活費を足す

ここを忘れる人が多いところです。

事業の経費だけで計算すると、生きていけない金額が出てきます。 家賃、食費、光熱費、スマホ代、日用品。全部足してください。

会社勤めなら会社が払っていたものが、いまは全部自分持ちです。それを含めて初めて「必要な金額」になります。

税金を足す

ここが一番抜けやすいところです。 そして抜けたまま計算すると、答えが大きくずれます。

去年の納付書を見て、次の合計を12で割ってください。

  • 所得税
  • 住民税
  • 国民健康保険
  • 国民年金
  • (課税事業者なら)消費税

住民税の納付書が来るたびに青ざめる人は多いと思います。私もそうでした。あれは、毎月積み立てておくべきお金です。 月割りにして固定費と一緒に扱うと、いきなり来る感じがなくなります。

なお、この記事では税率や控除の計算には踏み込みません。去年あなたが実際に払った金額をそのまま使ってください。 それが一番正確です。

制度そのものを確認したい場合は、国税庁のサイト(https://www.nta.go.jp//2026年7月時点)や、お住まいの自治体の案内をご覧ください。

貯金を足す

機材の買い替えや、急な出費のための分です。金額に迷ったら、こう決めてください。

いま使っている機材一式の買い替えを5年後と考えて、その金額を60で割る。

たとえば100万円分の機材を5年で入れ替えるなら、月に約1万7000円です。ここをゼロにすると、カメラが一台壊れた瞬間に立ち行かなくなります。

ステップ2:先月、実際に売上が立った日を数える

ここが、ほとんどの人が間違えるところです。

私は家での事務作業なら、休み関係なくほぼ毎日しています。見積もりを作る、請求書を出す、企画を考える、連絡を返す。どれも仕事です。

ただ、その日には売上が立っていません。

数える日、数えない日

数える 撮影した日、編集した日。つまり納品物が実際に進んだ日
数えない 打ち合わせ、見積もり作成、請求、営業、SNS更新、経理

迷ったら「その日、納品物は1ミリでも進んだか」で判断してください。

半日だけ触った日は0.5日で数えます。厳密にやりすぎなくて大丈夫です。

売上が立った日として数える作業と数えない作業の比較図

私の場合、撮影と編集で実際に動いた日は、月に10日ほどです。

先月が暇な月だった人へ

2月や8月など、極端に仕事が少ない月に読んでいる人もいると思います。その月の日数で割ると、現実離れした金額が出ます。

直近3か月の平均で数えてください。 3か月分の稼働日を足して3で割る。それだけです。

なぜここが大事か

事務作業の日まで稼働日に入れると、1日あたりの必要額が低く出るからです。

私も最初、稼働日を「働いた日」で数えて計算しました。事務作業も仕事なので、当然入れるものだと思っていたからです。出てきた必要額は、実際より2倍近く低い数字でした。その数字を基準にして「この案件なら足りている」と判断し、月末に足りなくなりました。

この計算は、稼働日を多く数えるほど、自分に都合のいい答えが出ます。 そこだけ気をつけてください。

ステップ3:割る

あとは足して割るだけです。

( 固定費 + 生活費 + 税金 + 貯金 )÷ 先月 売上が立った日数

これで出るのが、あなたが1日に最低限つくらなければいけない金額です。

固定費、生活費、税金、貯金の合計を売上が立った日数で割る図

記入例

仮に、地方でひとりで仕事をしている人の数字を入れてみます。

項目 金額
事業の固定費 10万円
生活費(家賃・光熱費・携帯込み) 20万円
税金の積み立て 5万円
貯金(機材の買い替え用) 5万円
合計 40万円
先月、売上が立った日 10日

40万円 ÷ 10日 = 4万円

この人が1日に最低限つくらなければいけない金額は、4万円です。

もしこの人が日当3万円の仕事を受けているなら、1日あたり1万円足りていません。 月10日なら、月に10万円足りない計算になります。

あなたの数字を入れてみてください

項目 金額
事業の固定費      円
生活費      円
税金の積み立て      円
貯金      円
合計      円
先月、売上が立った日      日

合計 ÷ 日数 =     円

一つ注意(ここを間違えると判定がずれます)

出てきた金額は、あなたの手元に入る必要がある額です。受注額ではありません。

現場までの高速代とガソリン代で5000円かかるなら、その分は上乗せして見積もる必要があります。アシスタントを頼むなら、その人件費も別です。

交通費や外注費が別途もらえない案件は、その分だけ実質の単価が下がっているということです。日当3万円でも、経費が5000円出ていくなら、手元には2万5000円しか残りません。

日当3万円から経費5000円を引くと手元に2万5000円残る図

出てきた数字が、いまの単価より高かったら

おそらく、多くの人がそうなります。私もそうでした。

ここで大事なのは、すぐに値上げしなければいけないわけではないということです。数字を知ることと、明日から単価を変えることは別の話です。

まずは、差額を知っている状態で受けてください。「この案件は1日あたり1万円足りていない。だから他で埋める必要がある」と分かっているのと、何も知らずに受けるのとでは、次の判断がまるで違います。

そのうえで、できることが3つあります。どれも値下げの反対で、金額を下げるのではなく、渡すものを減らすやり方です。

  • 範囲を狭める:全部やる前提をやめて、撮影だけ、編集だけを担当する
  • 納期を分ける:通常の納期と、急ぎの納期を分けて、急ぎには特急費をつける
  • 回数を決める:修正は何回まで、立ち会いは何日まで、と先に決める

「ご予算内で全部は難しいのですが、撮影だけを担当する形なら対応できます」。これが言えるようになるには、自分の必要額を知っていることが前提になります。

私がこの数字を出すようになった経緯と、日当の仕事を実際に断れるようになるまでの話は、別の記事に書きました。
→ 日当の仕事を断れるようになったのは、勇気が出たからではありません

まず、明細とカレンダーを開いてください

難しいのは計算そのものではなく、自分の金額を思い出すことと、稼働日を正直に数えることだけです。

今日やるのは1つでいいです。通帳とカードの明細を1か月分開いて、毎月同じ金額で引き落とされているものに印をつけてください。 それが固定費です。

そこまでできれば、あとは足して割るだけです。私も、数えるまでは自分の単価が高いのか安いのか分かっていませんでした。

ここだけの話

この計算、最初にやったとき数字を見て普通に落ち込みました(笑)足りてないのは薄々わかってたんですけど、はっきり数字で出ると結構くるものがあります。

あと、住民税の納付書。あれ毎年忘れた頃に来ますよね。私は何年か「なんでこのタイミングで」って言い続けてました。積み立てるようになってからは、来ても普通の顔してられます。

落ち込んだあとに単価の話ができるようになったので、やってよかったです。知らないままのほうがしんどかったと思います。

この記事の続き

この記事に書いたのは、私に実際に起きたことです。最初の案件をどう取るか、見積もりをどう作るか、どう断るか。その手順までは、この記事に書いていません。

記事は、私が何をしたかの記録です。教材は、あなたが明日やることの手順です。

そこだけをまとめたのが LOCALANCE BOOKS「受注の書(入門)」です。私が実際に使っている型をそのまま置いています。目次と中身は、このすぐ下から確認できます。