契約書は「あれもこれも」を止めてくれませんでした

月額の契約に切り替えたあと、範囲内で「ついでにこれも」が来るようになりました。私の契約書には、範囲外の仕事は書面で合意しないかぎり着手する義務を負わない、という趣旨の条項が入っています。それでも追加の依頼は止まっていません。同じ契約書ではっきり止まったのは、未入金のほうでした。書けば止まるものと、書いても止まらないものが分かれた話を書きます。

契約書は「あれもこれも」を止めてくれませんでした

月額の契約を1本持っていて、その相手から「ついでにこれも」が毎月のように来ている。断れずに全部やっている。その話を書きます。

先に結論を書きます。それはあなたの押しが弱いからではなく、月額にすると計算がそうなるからです。そして私の契約書には、それを止めるための条項が入っています。入っていて、止まっていません。

ただし、同じ契約書で止まったものが別にあります。

まだ月額が1本もない人には、単発を月額に変えた話のほうが向いています。

月額にしたら「ついでに」が増えました

私は福島で映像制作をしています。県内のある観光施設と、単発で受けていた仕事を月額の業務委託に切り替えました。いまも続いています。

切り替えたあと、月額の範囲内で「あれもこれもやってよ」という追加のオーダーが来やすくなりました。

単発のころは、頼めば見積もりが出てくることが、お互いに分かっていました。月額になると、その前提が薄くなります。

相手が変わったわけではありません。1本ずつ発注してもらう形をやめた時点で、そうなる仕組みでした。

どうやって切り替えたかは別の記事に書いたので、ここでは繰り返しません。

断る必要が出てくるのは、押しの弱さの問題ではありません

私が実際に困ったのは、断ることそのものではありませんでした。

理由をつけて断るために使う、気を遣う量が増えたことです。

毎月同じ相手と付き合っているので、一回ごとに関係をリセットできません。「それは範囲外です」の一言で済ませると、翌月も翌々月も、その空気の中で仕事をすることになります。

金額を据え置いたまま月額にすると、頼まれる量が増えるぶん、実質の値下げになります。断る必要が出てくるのは、気持ちの問題ではなく計算の問題です。

月額の契約とは、決めた範囲を繰り返す約束です。範囲が決まっていなければ、何を繰り返す約束なのかが決まっていないのと同じになります。

私の契約書に、実際に書いてあったこと

いま結んでいる業務委託契約書は1本ではありませんが、そのうちの1本から、読者に関係がありそうなものを3つだけ書きます。文面は載せません。何を決めている条項なのか、という趣旨です。

1つ目。範囲を超える業務は、都度あらためて見積もりを出し、書面で合意してから別途契約する。そして、事前の書面合意なく、範囲を超える業務に着手する義務を負わない。要するに、話がまとまる前に勝手に作業を始めなくていい、ということです。

2つ目。発注者の都合で期間の途中で終わった場合、そこまでやった分を請求できる。途中で切られても、働いたぶんは残ります。

3つ目。損害賠償の上限は、報酬の総額まで。万一のときに、払う額が青天井にならないということです。

もう1つ、仕組みの話を書きます。私の契約書は、やることの中身を契約書そのものには書かず、「仕様書」という別の紙に分けてあります。「こういうことをやります」「これは技術的に可能です」を書いた紙を、契約書と一緒に綴じます。

墨黒の机で、契約書を想起させる書類と別紙をクリップで綴じた俯瞰写真

こうしておくと、やることが変わっても契約書のほうを作り直さずに済みます。範囲を決めているのは契約書ではなく、この別紙のほうです。

これは私の契約書の話です。あなたの契約書に同じ紙が付いているかどうかは、私には分かりません。契約書そのものに、やることが書いてある形もあります。

契約書のうしろに、やることが並んだ紙が付いていないか見てください。付いていて、そこに中身が書いてあるなら、それがあなたの範囲です。どちらにも書かれていなければ、範囲は決まっていないことになります。珍しいことではありません。

その紙を開いたついでに、契約の期間も見てください。いつまでの契約か、黙って更新される形になっているか。あとで効いてきます。

それでも、追加の依頼は止まりませんでした

冒頭に書いたことを、もう一度だけ具体的に書きます。

この条項が入っている状態で、いま書いたとおりの追加オーダーが来ています。気を遣う量が増えた、と書いたのも、この条項がある契約での話です。

つまり、書いてあっても来ます。契約書は、相手が言ってこなくなる魔法ではありません。

同じ契約書で、止まったものもあります

止まったのは、支払いのほうでした。

個人事業主だった4年間で、受けた案件はぜんぶで150〜160件くらいです。そのうち4件が未入金になりました。最長で8か月待ちました。回収できなかったのは1件です。

4年間の150〜160件のうち未入金4件、最長8か月、回収できなかった1件を示す図解

原因は契約の緩さでした。発注書だけのやり取りだと弱い。金額が大きいものほど、押印する契約書にしておくべきだったと思っています。

いまは起きていません。契約書の条件を作り込んでから止まりました。回収そのものの話は未入金の記事にあります。

支払いは止まって、範囲は止まりませんでした。同じ紙です。

なお、私は契約書を税理士以外に見てもらっていません。相手が大きいところだと、先方に行政書士や顧問がついていることが多いので、そちらに任せる形になります。

法律の判断が要る場面では、専門家に確認してください。私が書けるのは、自分が実際に使っている紙の話までです。

だから、受けるときは自分で決めています

全部断ればいい、とは私は考えていません。

私は福島で仕事をしていて、取引先との付き合いを切り離して考える選び方をしていません。「あいつはよくやってくれるよ」という評判が、次の紹介につながることがあると思っているからです。

だから、契約の範囲に入っていなくても、自分の判断で引き受けることがあります。

線引きは1つだけです。その場で片づくか、机に向かう時間が要るか。

10分で終わる相談と、半日机に向かう企画は、同じ「ちょっとお願い」の顔をしてやってきます。分けているのは金額でも工数でもなく、自分の時間をまとまった塊で持っていかれるかどうかです。

これは我慢ではなく、私が選んでいることです。

断るときに私が持っている理由は、忙しいからではありません。その仕事にはちゃんと考える時間が要るから、ちゃんと形にして出したいという理由です。その場でうやむやに引き受けるほうが、相手にとっても良くないと考えています。

ただし、この選び方が正解だとは書けません。紹介がどれだけ増えたかを、私は測っていません。受けた仕事と来た紹介を線でつないだことはなく、体感の話です。

動いている契約は、途中でいじっていません

ここは、期待させたままにしないために書きます。

すでに動いている案件に、途中から契約書を差し込むことを、私はやっていません。面倒ですし、嫌われそうだからです。

やるのは、契約の期間が切れて、次の期間の契約書と仕様書を作るときです。私の月額は、1年ごとにここが来ます。単発の仕事なら、その案件が全部終わって、次の発注をもらったときになります。

正直に書くと、私はその節目を通ったあとも、追加のオーダーが来ている状態です。通れば片づく、という話ではありません。

それでも、いま月額が動いている人が今日できることは、契約書を作り直すことではありません。次の契約書と仕様書を作るときまでに、材料を貯めることです。

今日できること

1つだけ書きます。

今月「ついでに」で来た依頼を、思い出せるだけ書き出してください。

そのうえで、2つに分けます。その場で片づいたものと、机に向かったもの。

今月の「ついでに」の依頼を、その場で片づいたものと机に向かったものへ分ける図解

相手に聞く必要はありません。自分のスマホのメモで終わります。

机に向かったほうが何件あったか。それが、いまの契約の外側で自分が使っている時間です。

そこに並んだものが、次に仕様書を作るときに、やることの一覧へ足す候補です。

同じ種類の依頼が何度も来ているなら、それはまとめて1つで構いません。種類の数が、いまの契約に足りていない項目の数です。

ただし、足すときは金額とセットです。同じ料金のまま項目だけ足すと、いま実質の値下げになっているものを、次の1年ぶん紙に書いて固定することになります。私が切り替えたときも、値段のついていなかった仕事に値段をつけてもらう形にしました。

ここだけの話

偉そうに線引きの話を書きましたが、実際には毎回すこし迷っています。「これは机に向かうやつだな」と分かっていても、その場の空気で「やっときますね」と言いそうになる瞬間が、いまでもあります(笑)

あと、この記事は「契約書を作れば解決します」という話にできませんでした。作ってあるのに止まっていないので、書きようがなかったです。

この記事の続き

この記事に書いたのは、私に実際に起きたことです。単発を月額に変える設計、契約の作り方、範囲外を断る言い方。その手順までは、この記事に書いていません。

記事は、私が何をしたかの記録です。教材は、あなたが明日やることの手順です。

そこだけをまとめたのが LOCALANCE BOOKS「月額の書(中級)」です。私が実際に使っている型をそのまま置いています。目次と中身は、このすぐ下から確認できます。