日当いくらで、いまの仕事を受けていますか。
その金額に納得がないまま、それでも受け続けている。断ったら次に声がかからなくなりそうで怖い。私も長いあいだ、その状態でした。
いまは断ることがあります。ただ、それは交渉が上手くなったからでも、強気になれたからでもありません。受けなくても会社が回るようになったからです。
この記事は、日当や単発で仕事を受けていて、金額に納得がないまま続けている人へ向けたものです。私が実際に置いた数字と、そこへ至った順番を書きます。
断る基準を持っていても、意味がなかった時期がある
駆け出しの頃、私にも「この条件はきついな」と感じる案件はありました。それでも受けていました。生活があったからです。
正直に言うと、見積書を送る前に手が止まっていました。この金額でいいのか。でも高く出して断られたら、来月どうするんだ。結局そのまま送っていました。判断できていたのではなく、判断しないようにしていたのだと思います。

このとき仮に立派な判断軸を持っていたとしても、使えなかったはずです。選択肢がない人間にとって、基準は絵に描いた餅にしかならないからです。
だから「案件を選べるようになりたい」と考えている人に、いきなり判断軸を渡しても、たぶん効きません。先に必要なのは、断っても数か月は死なない状態です。
では、その余裕はどう作ったか
ここが一番知りたいところだと思います。正直に書くと、私の場合は単価を上げたからではありませんでした。単発の仕事を、翌月も続く契約に変えていったからです。
来月いくら入るか読める売上が少しでもあると、目の前の一件を断ったときの怖さがまるで違います。逆に、毎月ゼロから積み上げている状態では、どんな条件でも受けるしかありません。
この話は長くなるので別の記事にします。ここでは順番だけ伝えておきます。単価を上げるより先に、読める売上を作るほうが、断れる状態には早く近づきます。
自分の1日に、いくら必要かを計算した
では、どこで線を引いたか。
私が基準にしている時給は、12,500円です。8時間動けば10万円。これが、自分が現場に出るときの基本の一日です。

案件の重さによって、この時給は上がります。責任や難度が高い現場なら15,000円、さらに重ければ18,000円。1日あたりにすると12万円から14万円ほどになります。
この数字は、希望年収を稼働日数で割って出したものではありません。カメラマンやディレクターとして一日動くなら、これくらいの売上がないと会社が回らない。その実感から置いています。
対して、以前の私のカメラマン日当は3万円から5万円ほどでした。金額だけを見れば悪くありませんが、準備、移動、そして当日の責任まで含めると、いまの私の場合は採算が合いません。
当時と今で何が変わったか。保有する機材が高額になり、撮影技術だけでなく、現場での段取り、関係者とのやりとり、被写体への指示出し、照明担当との連携まで担うようになりました。つまり今の金額には、カメラを操作する作業代だけでなく、現場を成立させる責任が含まれています。
ひとつ断っておくと、この12,500円を相場として受け取らないでください。固定費も、専門性も、引き受ける責任の重さも人によって違います。
計算するとき、ほとんどの人が間違えるところ
自分の必要額を出すには、毎月出ていくお金を、実際に売上が立った日数で割ります。手順そのものは難しくありません。
ただ、一箇所だけ、ほぼ全員が間違えます。稼働日数の数え方です。
私は家での事務作業なら、休み関係なくほぼ毎日しています。見積もりを作る、請求書を出す、企画を考える、連絡を返す。これも仕事です。
ただ、その日には売上が立っていません。
私の場合、撮影と編集で実際に動いた日は、月に10日ほど。数えるのは、この日数だけです。

事務作業の日まで稼働日に入れると、1日あたりの必要額が低く出ます。そして実際には足りなくなります。ここを間違えると、計算した意味がなくなります。
実際の計算手順は、こちらの記事に分けて書きました。固定費に入れる項目、生活費の扱い、記入例まで載せています。
→ フリーランスが1日にいくら稼ぐ必要があるか、実際に計算してみた
計算したあと、金額が足りていなかったら
出てきた数字が、いまの日当より高い。おそらく多くの人がそうなります。私もそうでした。
すぐに値上げを言い出せなくても、やれることがあります。
私が変えたのは、この単価のまま全部を自分でやるか、断るかという二択の立て方でした。予算が合わないとき、その二つしかないと思っていると、受けるしかなくなります。
最近の案件では、こういう合意をしています。私が現場で手を動かさず、進行と判断に集中する前提であれば、先方の提示額で受ける。話を聞いてみると、相手が求めていたのは、必ずしも私自身が撮った最高品質の映像ではありませんでした。必要だったのは、一定の本数とスピードです。
これはチームがいるからできた形です。一人でやっている場合は、こういう組み替えができます。
- 範囲を狭める:全部やる前提をやめて、撮影だけ、編集だけを担当する
- 納期を分ける:通常の納期と、急ぎの納期を分けて、急ぎには特急費をつける
- 回数を決める:修正は何回まで、立ち会いは何日まで、と先に決める
どれも値下げではありません。金額を下げるのではなく、渡すものを減らすという考え方です。
相手が最初に出した金額が、その会社が使える上限とは限りません。「ご予算内で全部は難しいのですが、撮影だけを担当する形なら対応できます」と言えれば、それは交渉になります。断られることもありますが、少なくとも会話は続きます。
案件を断るとは、相手を拒否することではなく、自社が責任を持てる条件を先に示す行為です。この形にしてから、断ることへの後ろめたさはかなり減りました。
順番は、数字が先でした
振り返ると、こうでした。
読める売上を少しずつ作る。自分の1日に必要な額を計算する。値下げではなく条件の組み替えを提案するようになる。
判断軸から入っていません。数字と、断っても平気な状態が先で、基準は後からついてきました。
今日やってほしいのは一つだけです。先月のカレンダーを開いて、実際に売上が立った日を数えてください。 事務作業の日は入れません。
その数字を知らないまま日当の金額だけを見ていると、高いのか安いのかを判断できません。私も、数えるまでは分かっていませんでした。
ここだけの話
偉そうに計算の話をしましたが、私が自分の固定費をちゃんと把握したのは法人化してからです。それまでは通帳を見て「まあ、なんとかなってるな」で終わってました(笑)
あと、いまでも断るときはちょっと緊張します。慣れることはないですね。ただ、緊張しながらでも言えるようになったのは、数字を持ってるからだと思います。感覚だけで「安いんで」って言うのは、いまでも無理です。
この記事の続き
この記事に書いたのは、私に実際に起きたことです。最初の案件をどう取るか、見積もりをどう作るか、どう断るか。その手順までは、この記事に書いていません。
記事は、私が何をしたかの記録です。教材は、あなたが明日やることの手順です。
そこだけをまとめたのが LOCALANCE BOOKS「受注の書(入門)」です。私が実際に使っている型をそのまま置いています。目次と中身は、このすぐ下から確認できます。
