月商が50万円だったころ、売上が倍になれば少しは楽になると思っていました。
月商が100万円を超えたとき、私の場合、手元に残る感覚も、終わらない日の数も、ほとんど変わりませんでした。詰まっていたのは売上の額ではありません。売上の中身でした。
この記事は、月商が80万円から110万円のあたりを行き来していて、撮影も編集も自分でやっている個人事業主へ向けて書きます。私の場合の内訳をそのまま出します。すでにチームで動いている人には、物足りない内容です。
月商100万円で詰まるとは、何が詰まることか
月商100万円の壁とは、売上が足りない状態ではなく、自分の稼働時間が売上の上限になったまま仕事量だけが増える状態のことです。
私の場合、月商の段階ごとに、体制の性質が変わりました。
| 月商の目安 | 私の場合の体制 | 苦しくなるところ |
|---|---|---|
| 50万円 | 一人で運用できる | 自分の稼働がそのまま売上の上限になる |
| 100万円 | 外注なしでは回りにくい | 撮影と編集を自分で抱えると、納期・品質・営業・企画が同時に詰まる |
| 150万円 | 現場作業を減らし、企画と意思決定へ移る必要がある | 手を動かし続けると、上流の案件もチーム運営も新規事業も止まる |
これは私の事業での区切りです。単価も、案件あたりの工数も、業種で変わります。金額そのものより、「どこで体制の性質が変わったか」のほうを見てください。
100万円のところで起きたのは、収入が増えた実感ではなく、同時に落とせないものが増えたことでした。
私の月商100万円超の内訳を、そのまま出します
数字を隠すと話が伝わらないので、出します。私の場合の、月商が100万円を超えたある月のイメージです。個人事業主だったころの数字で、法人化後のものではありません。
案件の型は、30万円くらいの仕事を月に3件というのがいちばん近い形でした。小口を10件積み上げた月商ではありません。
| 項目 | 私の場合の金額 |
|---|---|
| 売上:ディレクション・企画 | 約25万〜30万円 |
| 売上:制作実務(撮影・編集) | 約70万〜80万円 |
| 外注費 | 約30万円 |
| 交通費・宿泊費 | 約5万〜10万円 |
| 差し引いた残り | 約60万〜70万円 |
ここでいうディレクションは、誰が何をいつまでにやるかを決めて、品質に責任を持つ仕事のことです。撮影も編集も自分でやっていると、ここが無料の付属品になりがちでした。
そして、いちばん誤解されやすいところを先に書きます。
この60万〜70万円は、手取りではありません。
ここから、固定費と税金を払います。
私の場合、個人事業主のころの固定費は月2万円から2万5000円ほどでした。電気代、水道代、インターネット代です。ガソリン代とサブスクは、ここには入れていません。機材費も入っていません。全部すでに自分の持ち物だったからです。
正直に書くと、私はこの月の税額を正確に把握していません。月商が100万円を超えているので10万円くらいかと思っていますが、これは私の見当です。税額は人によって変わりますし、私はここで判断できる立場にありません。自分の数字は、専門家に確認してください。
固定費が月2万円台というのは、家賃も機材のローンも発生していない時期だからこその額です。同じ規模でも、家賃や車のローンがあれば話は変わります。ここは自分の額を入れてください。
私自身、この記事のタイトルに月商100万円という数字を使っています。だから内訳まで書きました。原価と稼働時間を書かずに月商だけを出すのは、いちばん都合のいい行だけを切り取ることになるからです。
配分の目標を守っても、実感は変わらなかった
私が案件を組むときに置いている目標があります。外注に出すのは売上の4割まで、6割は手元に残す。いまもこの線で見積もりを作っています。
ただし、これは実績値ではありません。私の経営上の目標であり、感覚値です。そして、この目標を守れたところで、状況は何も良くなりませんでした。
理由ははっきりしています。この比率は、売上をどう配分するかしか決めていないからです。手元にいくら残るかも、自分の時間がどこへ消えるかも、ここからは出てきません。
私が実際に詰まっていたのは、2つです。ひとつは、さっき書いたとおり、残額から固定費と機材費と税金が出ていくこと。もうひとつは、残ったのがお金だけで、時間が1分も残っていなかったことです。

売上が50万円のころと比べて、作業量はほぼ倍になっていました。増えたぶんの多くは、自分の手を動かす時間です。
数字で書きます。私の場合、撮影など現場に出る日が月に10日ほど。残りの日も企画書、連絡、事務があるので、仕事をしない日はありません。1日の稼働はだいたい12時間でした。
そして、休みという設定を、そもそも作っていませんでした。 疲れて動けなくなったら休む、というだけです。週休2日を目指すようになったのは、法人化してからです。
配分の目標は、お金がどう分かれたかしか教えてくれません。自分の時間がどこへ消えたかは、別のところを見ないと分かりませんでした。
詰まっていたのは金額ではなく、企画3割・制作7割という比率
内訳をもう一度見ると、売上の内側が2つに分かれています。
- 企画・ディレクションの対価:おおよそ3割
- 制作実務(撮影・編集)の対価:おおよそ7割
先に断っておくと、この3割と7割は厳密に集計した比率ではありません。見積の内訳から見た、私のざっくりした把握です。
それでも、この形がすべてを説明していました。売上の7割が、私が手を動かさないと1円も発生しない種類のお金だったわけです。
つまり、売上を上げようとするほど、自分の作業時間が増えます。作業時間が増えるほど、企画や営業や次の提案に使う時間が減ります。企画の比率は上がらないまま、制作の量だけが積み上がります。
売上を増やしても、この比率が変わらなければ、企画に使える時間は1分も増えません。 これが、私が月商100万円のところで理解したことでした。
外注を入れて、余計に時間がかかった
ここで、時期を戻します。
さっきの内訳表の外注費30万円は、育てたパートナー2人へ払っているお金です。撮影の日当と、編集の費用が中身になります。
ひとつ補足すると、30万円は繁忙期の額です。私の場合、通常の月は10万円ほど。撮影が多い月もあれば編集が多い月もあるので、内訳の割合も月によって変わります。
渡している範囲も書いておきます。いまは編集をフルで渡しています。私の手元に残るのは、内容の確認と、連絡や進行のやりとりだけです。
企画をどう組むかも、構成をどうするかも、その前に私が決めています。そこは渡していません。
順番でいうと、外注の失敗が先です。独立して数年目に一度きれいに失敗して、そこから外注を試していった先に、月商100万円がありました。外注を使っていなかったから詰まったのではありません。使ったうえで、それでも時間が残らなかった、というのがこの記事の話です。
最初に外注を使ったとき、私が渡したのは口頭の指示と、参考になる動画のリンクだけでした。撮影も編集も経験のある人だったので、それで足りると思っていました。
上がってきた初稿は、体感で4割くらいの出来でした。私の頭の中にある完成形を100としたときの、私の主観の点数です。具体的には、こういう状態でした。
- カットのつながりに意味がなく、見ている人が状況を追えない
- テロップが、画面に映っているものをなぞるだけで、理解の助けになっていない
- 構成が、そもそもの企画意図と合っていない
結局、自分で直しました。修正の指示を書く時間と、直す時間と、確認する時間を足すと、最初から自分で作ったほうが早かったと思います。ここで「外注は使えない」と結論を出しかけました。
いま振り返ると、うまくいかなかった理由ははっきりしています。私が渡していたのは作業の手順で、判断の理由ではありませんでした。
企画の意図、この映像が誰に何を起こすためのものか、見た人にどこで感情が動いてほしいのか。それを渡さずに「この参考動画みたいな感じで」と言えば、相手は画面の見た目だけを再現します。当たり前でした。
やり方を変えてから起きたこと
次からは、企画資料そのものと、前提条件とゴールを先に共有しました。
ただ、資料を渡すだけでは足りませんでした。 資料は読めば分かるものしか伝えません。効いたのは、そのあとです。
最初のうちは撮影に同行して、判断をその場で説明しました。編集も一緒に画面を見ながら、なぜこのカットを使うのか、なぜこのテロップが要るのかを、そのつど言葉にしました。伝えたのは正解ではなく、視聴者が何を理解できず、どこで感情が動くかという見方のほうです。
このやり方で育った人が、いまは外注パートナーとして自走しています。私が横で見ていなくても、題材を読んで撮影と編集の判断ができます。
分母も書いておきます。私の場合、5人に頼んで、パートナーとして残ったのは2人です。残りの3人が悪かったわけではありません。合わなかった、というだけです。
渡せる範囲が広がったことが、育成の成果でした
育ったかどうかは、渡せる範囲で測れます。
- 最初のころ:私が粗編集まで自分でやってから、その先の仕上げだけを渡していた
- いま:編集をフルで渡している
同じ人に頼んでいても、渡せる範囲が変わりました。この差が、そのまま私の手元に戻ってきた時間です。粗編集を自分でやっているうちは、編集ソフトを開く時間は消えません。
この2人を、どこで見つけたか
ここがいちばん聞かれるところだと思うので、正直に書きます。
- 1人目:大学の後輩です。もともとカメラマンでした。かなり時間をかけて育てて、いまの一番手です
- 2人目:Threadsで見つけました。育って、いまの2番手です
残りの3人は、大学の同級生、高校の知り合いの知り合い、スチルカメラマンの仲間です。
Threadsは、正直に言えばかなりの賭けでした。それでも結果として、いい人に出会えて、育ってくれました。ただしこれは私の場合の1件で、SNSで探せば見つかる、という話にはしないでください。
そしてもうひとつ。5人とも、私から声をかけています。待っていて向こうから来た人は、1人もいません。
沈む期間と金額
正直に条件も書きます。これは時間もお金もかかる方法です。 同行した日は自分の作業が止まりますし、初期の手戻りぶんは自分がかぶりました。
金額でいうと、私の場合、育成の半年で30万円ほど使っています。1回ごとの額は小さくても、半年続くと積み上がります。当時の自分にはかなり辛い出費でした。
どれくらい沈むかは案件の回収スパンで変わりますが、半年は出ていくもののほうが多くなると覚悟しておくくらいでちょうどいいと思っています。そう見積もっておけば、たいてい耐えられます。
ひとつ、自分の考えが外れたところも書いておきます。私はずっと、もともと近い関係の相手でないと成立しないと思っていました。1人目が大学の後輩だったので、なおさらそう思っていました。
2人目のThreadsの人が、それを崩しました。関係の近さは、条件ではありませんでした。逆に、同級生や知り合いの知り合いという近い相手のほうが、続かなかったわけです。
とはいえ5人中2人です。品質の壁を越えられずに終わる組み合わせのほうが多いというのが、私の実感です。持ち帰れるのは、渡すものを「作業の手順」から「判断の理由」に変える、という一点だけです。相手が育つかどうかまでは、私も約束できません。
クライアントには、どう説明しているか
担当が変わります、とは言っていません。
個人事業主のころは、私個人の名前で仕事が来ています。だから撮影には必ず自分が行きます。そのうえで「一緒にスタッフがいるので、ご紹介しますね」と伝えて回していました。
編集を誰がやっているかは、正直、相手にはあまり関係のない話です。私の名前でメールを送り、窓口をやっているうちは、そこは変わりません。
そして、外注を使うときのやり方を決めています。自分がその場にいて、ちゃんと紹介して、1回2回は手間がかかっても一緒に仕事をこなす。橋渡しをして、クライアントと外注先がつながる場面を先に作っておくわけです。
法人にしてからは「この人にお願いします」と言う場面が増えていくと思っています。そうしないと自分の手が空かず、次の事業に行けないからです。
手戻りが起きても、外注費は満額払っています
ここは決めています。上がってきたものが期待どおりでなくても、私は減額しません。
理由は単純です。減額すると「うまくいかなかったら減額してもらえばいい」と思われるからです。そうなると、責任の重さが伝わりません。
私が伝えたいのは逆のことです。あなたにお願いした仕事はこの金額です。だから、早くこの金額の仕事ができるようになってください。そういう意味を込めて、うまくいかなかった時期も満額払っていました。
これは本人にも、そのまま説明しています。黙って払っているわけではありません。
品質が落ちて客が離れるのが怖い、という話
編集を人に渡すとき、いちばん怖いのはここだと思います。私もそうでした。
私の場合の答えは、渡したのは編集で、品質の責任は渡していないということです。最終確認と修正指示は、いまも自分がやっています。
確認するとき、私が最初に見るのは誤字やBGMではありません。企画の意図と合っているか、見た人が理解できて感情が動くかです。仕上げの粗さは直せますが、ゴールに合っていない映像は、直しても価値が上がりません。
外注は丸投げではありません。手を動かす人が変わっても、顧客に対して品質の責任を持つ人は変わらないという形にしただけです。
ここで、「それは結局、外注に出して自分で直しているのと同じでは」と思った人がいると思います。私も最初はそこで止まっていました。違いは1つです。
- 失敗していたころ:初稿がゴールを外していたので、私が作り直していた
- いま:初稿がゴールに乗った状態で上がってくるので、私は直すのではなく、確認して指示を出す
作り直すのと、確認して指示を出すのは、別の作業です。前者は編集ソフトを開く時間、後者は開かない時間です。この差が何時間だったかは、このあと数字で書きます。
ゴールを外した初稿は直しても価値が上がらないので、直せる状態で上げてもらうところまでを、先に作るしかありませんでした。
先に手放したのは、誰でもできる作業ではありませんでした
外注を入れるとき、最初に考えたのは「誰でもできる作業から渡そう」でした。この基準は、私の場合うまく働きませんでした。
いま私が使っている基準は違います。自分が抱え続けることで、企画・営業・顧客理解・意思決定が止まる作業から先に手放す。
私が先に手放したのはこの3つです。
- 動画編集
- SNS投稿のうち、何を出すかがすでに決まっていて、判断が要らないもの
- そのほか、自分が続けても単価も実績も積み上がらない反復作業
逆に、手放していないものもあります。
- 企画
- 挨拶、関係づくり、重要な商談
- 自分の顔と信用が必要な仕事
- 顧客の状況を読んで発想する仕事
- データを見て次を提案する仕事
編集は、私がいちばん長くやってきた作業です。手放すのが怖かったのも編集でした。それでも先に手放したのは、私が編集をしている時間は、企画も営業も完全に止まるからです。
時間は浮いたのに、暇にはなりませんでした
手放して、どれだけ時間が浮いたのか。数字で書きます。
企業のインタビュー映像1本の編集で、私の場合、それまで実働6時間×4日=24時間かかっていました。編集だけに使えるのは1日6時間ほどで、残りの時間は撮影や打ち合わせや事務に取られるので、4日に分かれます。
いまは3時間ほどです。内容の確認と、連絡や進行の管理だけになったからです。差は21時間。私の1日は12時間なので、ほぼ2日分です。

ここまでなら、いい話に読めると思います。ただ、そうはなりませんでした。
私の1日の稼働時間は、いまも12時間くらいのままです。 法人化してからも変わっていません。浮いた時間は、そのまま別の仕事で埋まりました。
正直に書きます。編集を渡した分だけ、ディレクションと確認と、新しい案件の仕事が増えました。 外注は、忙しさそのものを減らす道具ではありませんでした。
変わったのは総量ではなく中身です。1本にかかる時間が減ったぶん、受けられる本数と、企画に回せる仕事が増えました。空いた時間が休みになったわけではありません。
だから、この記事は「外注すれば楽になる」という話ではありません。楽になりたいだけなら、案件を減らすほうが確実です。
外注で手に入るのは、休みではなく、同じ時間で引き受けられる仕事の幅です。そこが要らないなら、無理に外注する理由はありません。
まだ解けていないこと
この記事を、解決した人間の報告として読まないでください。私はまだ途中にいます。
企画・ディレクションが3割という比率は、まだ大きくは動いていません。制作実務を渡した分だけ受けられる案件が増えて、そのぶんディレクションの量も増えるからです。比率を変えるには、渡す作業を増やすだけでは足りないということだと考えています。
150万円のところで待っている「現場を減らして意思決定へ移る」という課題も、まだ越えていません。手を動かす仕事のほうが、成果が見えて安心できます。その安心を手放すのが、いちばん難しいところです。
外注についても、赤字になった月がなかったわけではありません。育成のために同行した期間は、その分だけ自分の売上が減りました。
今日やること — 請求書を2つに分ける
読み終えたあとにやってほしいことは、1つだけです。
直近1か月に出した請求書と見積書を並べて、金額を2つに仕分けてください。
1. 企画・ディレクション・打ち合わせ・提案に対して受け取っている金額
2. 撮影・編集・現場の作業に対して受け取っている金額
見積の内訳が分かれていない案件は、ざっくりで構いません。「この案件は実質ほぼ撮影と編集だった」で十分です。手元の請求書だけで数えられます。
出した2つの合計の比率が、いまの立ち位置です。
制作実務の側が7割を超えていたなら、次にやることは単価を上げることではありません。来月手放す作業を1つ決めることです。 選び方は「誰でもできるか」ではなく、それを自分が抱えているせいで、どの仕事が止まっているかから逆算してください。
私の場合、その答えが編集でした。渡してみて、暇にはなりませんでした。それでも、抱えていたころには手が回らなかった仕事に、時間を使えるようになっています。
ここだけの話
偉そうに「手放せ」と書きましたが、外注に出した初稿を見て、結局その日の夜に全部自分で作り直して朝になった、みたいなことを何度もやってます(笑)
いまでも編集画面を開くとちょっと楽しいんですよね。人に任せるのが上手いから任せてるんじゃなくて、任せないと会社が止まるから任せてる、というのが正直なところです。
この記事の続き
この記事に書いたのは、私に実際に起きたことです。人に任せる順番、お金と時間を手元に残す組み方。その手順までは、この記事に書いていません。
記事は、私が何をしたかの記録です。教材は、あなたが明日やることの手順です。
そこだけをまとめたのが LOCALANCE BOOKS「経営の書(上級)」です。私が実際に使っている型をそのまま置いています。目次と中身は、このすぐ下から確認できます。
