月額の契約さえ作れば安定する、と私も思っていました。実際に作ってみると、いちばん利益率が低いのがその月額運用でした。それでも減らしていません。
私は福島で、映像制作とWebの仕事をしています。いま売上は4本の柱に分かれていて、この記事ではその4本の役割の違いと、月額をどこまでの契約として扱っているかを書きます。
読んでほしいのは、月額の契約を1本でも持っている人か、いま作ろうとしている人です。まだ1本もなく、最初の1本をどう取るかを知りたい人には向きません。それは別の記事で書きます。
売上の柱とは、入金の入り方が違う仕事のかたまり
売上の柱とは、入金の入り方と、事業の中での役割が違う仕事のかたまりのことです。
同じ「映像の仕事」でも、1回で終わるものと、毎月続くものと、そもそも作る前の相談だけのものでは、入るお金の性質がまったく違います。
私の場合、いまはこう分かれています。

| 柱 | 売上に占める割合(概算) |
|---|---|
| 単発制作・行政案件 | 30% |
| 月額運用 | 30% |
| 企画伴走 | 20% |
| イベント・その他 | 20% |
先に断っておくと、この数字は概算です。きれいに割り切れているのは正確に測ったからではなく、私がざっくり掴んでいるからです。私の場合の話であって、この比率が正解というつもりはありません。
自分の比率を知りたければ、この1年に出した請求書を「一度きりで終わった仕事」「同じ相手に繰り返した仕事」「作る前の相談で受け取ったお金」「それ以外」に分けて足すだけで出ます。相手に聞く必要はありません。
この比率は、積み上がった結果です
ここが、いちばん誤解されたくないところです。
来た仕事を受けて、続いたものが続いて、積み上がった結果がこの形でした。 「30・30・20・20にしよう」と決めて、そこへ寄せたわけではありません。
やったことは順番にひとつずつです。単発で受けた相手と関係が続き、そこから毎月の契約になり、その中から相談の仕事が生まれました。
私が分けて見るようになったのは、混ざったまま合計だけを見ていると、どの仕事で薄くなっているかが分からなかったからです。 比率は、その結果として出てきた数字にすぎません。
いちばん利益率が低いのは、月額運用です
継続収入という言葉から想像されるのは、たぶん「寝ていても入ってくるお金」です。私の実感は違います。
私の4本の中で、利益率がいちばん低いのは月額運用です。
規模が分からないと比率だけ言われても困ると思うので、金額を1つ出します。私の場合、いま月25万円の月額契約があります。 相場ではなく、私のこの1本の話です。月額運用がぜんぶこの額というわけでもありません。
中身も書きます。この契約で毎月やっているのは、撮影が1日、編集が横向きの動画4本。そこから縦向きに切り出して4本。合わせて8本です。
これが毎月、同じ量だけ発生します。今月納めても、来月また同じ8本が来ます。
この25万円のうち、10万円は外注費です。手元に残るのは15万円。 この1本についての実額で、他の月額契約も同じとは限りません。

誤解のないように書くと、儲からないというのは赤字という意味ではありません。毎月必ず原価が立つぶん、他の柱より残らないという意味です。あとで書く企画伴走は実行を別見積にしているので、毎月の原価がほとんど立ちません。同じ売上でも、手元に残る額が変わります。
月額は、原価がゼロになる仕組みではありません。 毎月同じだけ働く約束です。
冒頭に「月額の契約さえ作れば安定すると思っていた」と書きました。間違っていたのは、安定の中身です。売上が読めるようになるところまでは合っていて、そのぶん楽になると思っていたところが違いました。
それでも月額運用を減らさない理由
利益率がいちばん低いのに、私はこの柱を減らしていません。4つ理由があります。
1つ目は、読める売上になることです。 来月いくら入るかは契約で決まっています。暇な月に安い仕事を反射で受ける必要が、そのぶん減ります。
2つ目は、顧客のことが分かることです。 単発だと、納品したらそこで関係が切れます。毎月関わっていると、その会社が何に困っていて、社内で何が決まらないのかが見えてきます。
3つ目は、外注パートナーの仕事が途切れないことです。 毎月決まった量の仕事があるから、継続して頼めます。単発だけだと、忙しい月に急に人を探すことになります。
4つ目は、作る前の相談が来る入口になることです。 これがいちばん大きいのですが、少し長くなるので章を分けます。
断れるようになった境目は、割合ではありませんでした
「月額が売上の何割を超えたら、安い仕事を断れるようになるか」。私もそこを知りたかったのですが、割合では出てきませんでした。正直に言うと、測っていません。
代わりにはっきりしているのは、実額のほうです。毎月固定で入る額が、最低限生きていける額を超えたときでした。 私の場合、それは10万円です。個人事業主だったころ、10万円あればとりあえず生きていけると思っていたので、そこを超えてからは断っても大丈夫だと思えるようになりました。
だから見る数字は、売上に占める割合ではありません。毎月確実に入る額が、自分が生きていける額を超えているかどうかです。10万円という額は私の生活費の話なので、そのまま使わないでください。
ただし、月額は切られます
相手の予算、目的、担当者が変われば、そこで終わります。私は終わりをすべて自分の力不足とは考えず、引き継ぎをして次を探す、と決めています。読める売上は、永久に読めるという意味ではありません。
なお、月額の1本目をどう作るか(単発の相手にどう切り出すか、金額をどう決めるか)は、この記事では扱いません。別の記事で書きます。
月額は、決めた範囲を繰り返す契約です
ここを間違えると、月額はただの安い仕事になります。
私が月額にしているのは、こちらの側で段取りでき、毎回ゼロから決め直さなくていい仕事だけです。私の場合はそれが、撮影と編集と投稿でした。
ただ、これは映像の話です。職種が違えば繰り返せる工程も変わるので、判断の線だけ書きます。
相手が困っていることを、繰り返しの作業で解決できるなら、それは月額にできます。
たとえばWebの文章を書き続けること、SNSの投稿、ブログやファンクラブページの更新。すでにある数字を集めてレポートにすることもそうです。来客数のような、オンラインではないデータでも構いません。
発想さえできれば、たいていの職種で作れます。逆に、一件ごとに体制や決裁を組み直す仕事、相手が主導で方針を大きく変える仕事は、月額にしません。確認と調整の工数だけが増えるからです。
そのうえで、月額契約は新しい仕事を無制限に入れられる箱ではなく、決めた範囲を繰り返すための契約として扱っています。
原則として、こういう要求は月額の中に入れません。
- 新しい工程が増える仕事
- 追加の人員が必要になる仕事
- 遠征や外部ロケで、交通費が大きく増える仕事
- 編集の工数が大きい、または複雑な仕事
どれも、月額の金額を決めたときには存在しなかった原価です。ここを飲み込むと、月額の粗利は簡単に消えます。
だから契約のときに、対象になる場所、撮影の回数、本数、編集の仕様、投稿の範囲、そして何が起きたら追加料金になるかを決めます。決めるのは、断るためではなく、追加を追加として請求できるようにするためです。
「初稿まで」で、請求できなくなった話
範囲を決めていなかったせいで工数が膨らんだ例を、1件書きます。これは月額ではなく、制作会社経由の単発案件で起きたことです。
先に、なぜここに置くかを書きます。単発なら、ずれても1回で終わります。月額は同じ言葉で毎月繰り返すので、定義していない範囲は毎月ずれ続けます。 1回分の損では止まりません。
私は撮影と編集の見積もりに「初稿まで」と書いていました。私の認識では、初稿を組んで提出した時点で私の担当は完了です。
制作会社側の認識は違いました。その初稿を発注元へ出して、戻ってきた修正に対応するところまでが「初稿まで」でした。
同じ言葉なのに、誰に出す初稿なのか、どの時点で私の納品が終わるのかが決まっていませんでした。だから修正が出ても追加費用を出しにくく、結局そのぶんは請求できませんでした。 関係も少しギスギスしました。
膨らむときは、こういう膨らみ方をします。相手が無茶を言ってきたわけではありません。「初稿」「一式」「運用」「サポート」のような、お互いが別の完了像を持てる言葉を、そのまま契約に使っていたのが原因でした。
月額で言えば、「投稿の運用まで」「SNSのサポート込み」あたりが同じ危なさを持っています。
いちばん利益率が高いのは企画伴走。でも単体では取れません
もう一方の端が企画伴走です。私の4本の中では、利益率がいちばん高い柱です。
先に、何をしている仕事かを書きます。企画伴走とは、作るものを決める前の段階に入って、方針を一緒に決める仕事です。
たとえば、持っている場所や資源をどう使うか。何と何を組み合わせて売上をつくるか。会社としてこの先どう事業を広げるか。そういう話に対して、打ち合わせに出て、材料と案を出します。
納品するのは、動画でもサイトでもありません。相手が決めるための材料です。 利益率が高いのは、手を動かす原価を常に抱えなくていいからで、実行が必要になったらそのぶんを別に見積もります。
ただ、この柱は最初から取れたわけではありません。
私の企画伴走の契約は、月額運用を続けていた先から生まれました。 毎月データを見て、次に何を試すかを提案しているうちに、打ち合わせに出てくる相手が現場の担当者から、予算と方針を決める人に変わりました。
観光の仕事です。最初は単発の制作で入り、そこから毎月の運用契約になり、その先で企画の契約が生まれました。 その企画の契約も、初年度は半期ごとの請求で、いまは月額です。
いきなり企画の契約が取れたわけではありません。 段階を1つずつ上がっただけです。
利益率がいちばん低い柱が、利益率がいちばん高い柱の入口になっていたわけです。
ただし正直に書くと、この順番で起きたのは私の場合1件です。 月額を持てば相談が来る、という話ではありません。私が言えるのは、月額を利益率だけで切っていたらこの1件は無かった、ということだけです。
やっていたことは1つで、頼まれていない提案を毎月出していただけです。月額で毎月データを見ているので、材料はそこにありました。契約に入っていない仕事を無償でやったのではなく、次に何を試すかの案を渡していただけです。
企画伴走料に、実行費を含めない
決める側に入る仕事でいちばん危ないのは、企画から出てきた実行まで、全部そこに含まれていると思われることです。
私は分けています。
| 企画伴走料に含めるもの | 別見積にするもの |
|---|---|
| 方針づくり | Web制作費 |
| 全体企画 | 動画ディレクション費 |
| 意思決定のための提案・伴走 | 撮影費・編集費 |
| 実行に必要な人件費・外注費・実費 |
企画から生まれた案を誰が実行するかは、相手が決めることです。私がやる場合は費用を見積もりますし、他社に頼むと決めても構いません。
伴走契約を、無償の制作契約にしないこと。 これだけです。
これから増やす柱と、減らす柱
いまの4本は、このまま固定するつもりはありません。
増やしたいのは企画伴走です。 決める段階と作る段階の両方に関われるほうが、結果として作るものが良くなるからです。
ただ、この柱がどう生まれるかを、私は1件の経路でしか知りません。増やすと言っていますが、増やし方が分かっているわけではありません。 だから単発も月額も減らさずに持っています。入口を閉じたら、次の1件が来る場所がなくなります。
減らす方向なのは単発案件、特に規模の小さいイベントの仕事です。 当日に人手を出して終わる仕事は、拘束される時間のわりに利益が薄く、次にも残りません。
ここでいう「残る」は3つです。次の受注につながる実績か、続く取引先か、チームができるようになった作業か。 どれも生まれないなら、その仕事は時間と交換しただけで終わります。
ただ、単発をゼロにする気はありません。新しい相手との最初の取引は、たいてい単発から始まります。入口の柱をなくすと、次の月額も企画伴走も生まれません。
今日できること
柱の比率は、設計するものではなく、あとから出てくる数字でした。今日できるのは、いま持っている契約の言葉を見直すことです。
いま出している見積書と契約書に、この4つの言葉が入っていないか見てください。
- 初稿
- 一式
- 運用
- サポート
入っていたら、その横に「何を渡した時点で完了か」を書き足してください。 それだけです。
この4語は、自分と相手が別の完了像を持てる言葉です。私はこれで、請求できたはずのぶんを1件落としました。単発なら1回で済みますが、月額はこれを毎月繰り返します。

見積書を開いて、4語を探して、完了時点を1行足す。ここまでは今日できます。
ここだけの話
柱とか比率とか偉そうに書きましたが、私も少し前まで「今月いくら入ったか」しか見ていませんでした。
内訳を気にしだしたのは、外注費を払う側に回ってからです。売上は増えているのに手元が薄いぞ、と気づいて、初めて分けて数えました。順番としては、かなり遅いほうだと思います。
—
この記事で書いたのは、私が何をどう分けているかと、どこで落としたかまでです。範囲の決め方や、追加が出たときに関係を悪くせず再見積もりへ切り替える言い方は、月額の書(中級)にまとめています。
この記事の続き
この記事に書いたのは、私に実際に起きたことです。単発を月額に変える設計、契約の作り方、範囲外を断る言い方。その手順までは、この記事に書いていません。
記事は、私が何をしたかの記録です。教材は、あなたが明日やることの手順です。
そこだけをまとめたのが LOCALANCE BOOKS「月額の書(中級)」です。私が実際に使っている型をそのまま置いています。目次と中身は、このすぐ下から確認できます。
