アートは商売にならないのか。売上は立ちますが、私の人件費は乗っていません

アートは商売にならない、とよく言われます。私の場合、売上は立っています。バンドの音源1タイトルのサイクルで、売上は60万円ほど。ただし原価や会場費を引くと、残るのは20万円です。それでも商売にはなっていません。立っていないのは私の人件費のほうです。お金にしなくていいと思う気持ちと、お金にならないと続かないという事実の両方について書きます。

アートは商売にならないのか。売上は立ちますが、私の人件費は乗っていません

アートは商売にならない、とよく言われます。

私は福島で映像制作とWebの仕事をしていて、そのかたわらでバンドのマネージャーをしています。そちらは、いわゆるお金にならない側です。

ただ、正確に書くと違います。売上は立っています。立っていないのは、私の人件費のほうです。

読んでほしいのは、作りたいものがあるのに、それは仕事にならないと思っている人です。

実際には、お金になっています

まず、事実から書きます。私の場合の数字です。

個人で音楽活動をしていた時期があります。YouTubeに音楽を投稿して、サブスクでも配信していました。そこで1万円ちょっとの収益が上がっていました。

バンドのほうは、音源を1タイトル出すたびに、1か月から2か月のサイクルで動きます。音源を作って、それを売るライブをして、そのとき作ったグッズを一緒に売る。ここまでで1サイクルです。

作るものと値段は、だいたいこうなっています。

作るのにかかる額 売る値段
ステッカー 100枚で5000円ほど 1枚300円
Tシャツ 50枚ほど、1枚2000円 1枚5000円
CD 100枚で6万円ほど 1枚2500円

このサイクルで、売上は60万円ほど立ちます。

正直に書くと、私はここがかなり大雑把で、売上票をちゃんと見ないと正確な額は分かりません。60万円は「そのくらい」という数字です。

そして、自分のYouTubeチャンネルもやっていました。こちらも収益が上がっていましたし、その延長で仕事の依頼をもらったりもしていたので、普通に稼げていました。

「アートは1円にもならない」は、私の場合は事実ではありません。

60万円の売上から、残るのは20万円です

ここから引くものがあります。

  • グッズと音源の原価(このときは20万円弱でした)
  • ライブハウス代
  • 広告費とフライヤーの印刷代

これらを引いて、残るのが20万円ほどです。これはバンドの活動費としてプールします。誰かの取り分にはなりません。

60万円のうち、40万円は出ていく側です。

それでも、商売にはなっていません

では何が足りないのか。ここを正直に書きます。

グッズの制作費は、一旦私が出しています。売上から全額回収する形なので、正確には立替です。SNSの広告費も、私が持っています。

そして、撮影も編集も、私がやっています。

動画を作るのは私の本業です。その仕事に、値段がついていません。受託でやれば当然お金をもらう作業を、ここでは無料で入れています。

つまりこういうことです。

残った20万円にも、私の人件費は乗っていません。

自分の時間は、数えていません。数え出したら計算してしまって、大変なことになると思うので。

「アートだから、お金にしなくていい」と思っています

ここが、この記事でいちばん書きたかったところです。

私は「アートだから、お金にしなくていい」と思っています。それは本心です。

でも同時に、お金がないと続かない、とも思っています。

機材は買い替えます。グッズは先に作らないと売れません。人が動けば交通費がかかります。お金にならないものは、続きません。

だから私の答えはこうなります。

お金にならないこと自体は、半分くらいは問題です。

どっちがどっちじゃないんです。どっちも大事なんです。

なぜ「半分」なのか

前回、アートとデザインをこう分けました。アートは正解がいくつあってもいい。デザインは正解が1つになるように設計されている。

私にとって商売とは、正解を1つに決めることで成立するもののことです。買う、申し込む、来る。1つの行動に向けて全部を寄せていく。

だから、アートを丸ごと商売にしようとすると、それはもうアートではなくなります。正解を1つに絞った時点で、デザインの側に移っているからです。

かといって、全部を商売から切り離すと、続きません。

この2つが同時に成り立たないから、答えが「半分」になります。きれいに割り切れる話ではないと思っています。

商売にできる部分は、実はある

ただ、全部が全部、商売にできないわけではありません。

グッズと音源は、商売の形になります。買うという1つの行動に向かって作れるからです。実際、そこで60万円の売上が立っています。

商売にしにくいのは、曲そのもののほうです。聴いた人がどう受け取るかは自由で、正解が1つに決まりません。

私たちが売っているのは、曲を好きになった人が買えるものです。曲そのものを売っているわけではない、という言い方のほうが近いかもしれません。

なぜ10年続いたのか

このバンドは、私が手伝う前から10年ほどこのやり方でやっています。回収はできていなかったと思います。

続いた理由を、私はこう思っています。メンバーが本当に音楽を好きで、バンドを好きだからです。

売れたいとは思っています。でもそれ以前に、自分の生活費からお金を出し合ってでも続けたい、好きだからやりたい、という思いでやっている。それで10年です。

これは「情熱があれば続く」という話ではありません。続いているのは事実ですが、その裏では全員が自分の生活費を削っています。私の人件費が乗っていないのと、同じ構造です。

まだ解けていません

お金にする方法を考えないといけないな、と常日頃思っています。

人件費が乗っていない状態は、私が動けるうちしか続きません。私は以前、1か月動けなくなったことがあります。そのとき消えたのは約38万円でした。あれが起きたら、この仕組みは止まります。

ここを解かないまま10年続いているのが、実際のところです。

みなさんも考えてみてください。自分の作っているもので、どこまでが商売にできて、どこからができないのか。私はまだ答えを出せていません。