地方でフリーランスとして独立すると、まず「営業しなければ」と考えます。
名刺を作る。交流会へ行く。SNSを毎日更新する。営業メールを送る。それでも、仕事につながらない。私も同じ状態から始まりました。
ただ、振り返ってみると、最初の法人案件は大量の新規営業から生まれたものではありませんでした。先に仕事を見える状態にし、制作会社が足りていない工程へ入り、次も任せやすい対応を積み重ねた結果、紹介と直接受注につながっています。
この記事では、福島で映像制作を始めた私が、最初のB2B案件と直接受注へ進むまでの過程を分解します。成功談としてきれいに見せるのではなく、当時の金額や失敗も含めて、別の地域・職種でも置き換えられる形にします。
最初の仕事は、営業メールからではなかった
映像制作で最初に売上が立った仕事は、ライブハウスで活動していた先輩バンドのMVでした。金額は15,000円です。
きっかけは「映像を作れます」と売り込んだことではありません。そのバンドの楽曲や今後の活動について、映像を使ってどんな見せ方ができるかを先に話していたことでした。
その後、ライブハウスで複数のバンドを撮影し、素材を各バンドへ納品しました。納品した映像はバンド自身のSNSへ投稿されます。その投稿を、ライブハウスへ来ていた映像・Web制作会社の担当者が継続的に見ていました。
そこでいきなり案件全体を任されたわけではありません。最初はカメラマン見習いとして、日当20,000円で現場に入りました。月の稼働は4回程度。翌月には福島県内の農家・生産者・経営者を取材する映像の撮影を担当し、さらに翌月には編集も任されるようになります。
編集は1本15,000円で、1か月に27本。編集料だけで405,000円です。撮影分を合わせた当時の入金は、記憶上では約450,000〜500,000円でした。
ただし、これは推奨する働き方ではありません。当時はアルバイトと並行しており、睡眠時間をほとんど取れないほどの負荷でした。ここで見るべきなのは金額の大きさではなく、仕事が生まれた順番です。
- 小さな案件を納品する
- 依頼者の場所で成果物が公開される
- 顧客に近い制作会社がその仕事を見る
- 足りていない工程から現場へ入る
- 撮影から編集へ、任される範囲が広がる
「営業を何件送れば取れるか」ではなく、「誰が、どこで、自分の仕事を確認できる状態をつくるか」が最初の分岐点でした。

法人案件につながる前に整えた3つのこと
1.仕事の結果を、他人が確認できる状態にする
ポートフォリオは、自分のサイトに作品を並べるだけではありません。
発注した人が実際に使っていること。第三者のSNSやWebサイトに掲載されていること。どんな目的で、どこまで担当したのかが説明できること。この3つが揃うと、単なる作品ではなく「依頼した結果」の記録になります。
私の場合は、バンドへ納品した映像が各バンドのSNSで公開され、制作会社の担当者が継続的に見ていたことが接点になりました。後の直接受注では、運営していたYouTubeチャンネル「フリー映像屋のタマサカ」も、考え方と実務能力を確認してもらう材料になっています。
SNSを毎日更新すること自体が仕事を生むわけではありません。依頼を検討する人が「この人へ頼むと、こういう結果になる」と判断できる情報を置くことが目的です。
2.最初から全部を請けず、不足している工程へ入る
実績が少ない段階で、法人へ「企画から運用まで全部できます」と提案しても、相手は判断できません。
一方、制作会社やWeb会社には、すでに顧客と案件があります。その中で、撮影だけ足りない、編集だけ追いつかない、現地対応できる人がいない、といった不足工程が発生します。
私も最初は見習いとして撮影へ入りました。そこで仕事の進め方を確認してもらい、次に撮影担当、その次に編集担当へ役割が広がりました。
地方で法人案件へ入る入口は、最終顧客への直営業だけではありません。制作会社、Web会社、デザイン会社、イベント会社など、顧客に近い事業者の不足工程を埋めることも有効なルートです。
3.「上手い人」より「次も任せやすい人」になる
初期の私は、技術が特別高かったわけではありません。評価された主な理由は、返信、納品、修正対応の速さでした。
当時は、通知に気づいた時点で返信し、確認できる状況で1日以上空けない。編集は原則1日1本をアップロードする。修正依頼は遅くとも翌日までに対応する。現場では、後から必要になりそうな素材を先回りして確認する。こうした行動を続けていました。
ただし、24時間対応や過剰労働を推奨したいわけではありません。再現するなら、次のようなサービス基準へ置き換えます。
- 問い合わせへ何時間以内に一次返信するか決める
- 納品予定日と現在の進捗を先に共有する
- 修正の回数、期限、対象範囲を合意する
- 次工程で必要になる素材や確認事項を先回りして伝える
技術は比較しにくくても、「連絡が止まらない」「予定が見える」「抜けを先に教えてくれる」は、発注者が判断しやすい価値です。

初めての直接受注は、YouTubeと紹介から始まった
制作会社の仕事で実務経験を積んだ後、最初の直接受注につながったのは、福島市内の観光関連企業の案件でした。
先に関わっていた制作会社がその企業のWebサイト制作を担当しており、その関係から紹介を受けました。運営していたYouTubeを見た担当者から、「自分でYouTubeを作れるなら、自社チャンネルの開設を手伝ってほしい」と相談されたことが始まりです。
チャンネル立ち上げは無償で行い、最初の動画は1本50,000円。企画、撮影、インタビュー、編集、YouTubeへのアップロード、概要欄管理、SNS投稿まで含めていました。同じ形式を約4本制作し、動画制作分の売上は約200,000円です。
数字だけを見ると悪くありません。しかし、1本あたり撮影1日、編集約3日。交通費を引いた手残りは約46,000円で、4日で割ると日あたり約11,500円です。標準価格として続けられる条件ではありませんでした。

それでも、この仕事を通じてSNS周辺の業務委託へつながり、2026年時点で3年目の継続契約になっています。
大事なのは「最初は無料や低価格でやるべき」という話ではありません。実績取得や関係構築のために投資価格で受けるなら、次の提案と、投資を終える条件まで先に決めるということです。
今週できる、最初の法人案件へ向けた7つの準備
ここまでを、自分の仕事へ置き換えてみます。次の7項目を、1日1つ進めてください。
- 顧客を1種類に絞る:誰の、どんな困りごとを解決するか一文で書く
- 過去の仕事を3件棚卸しする:目的、担当範囲、結果を整理する
- 実績を1ページにまとめる:作品だけでなく、依頼前の課題と納品後の使われ方を書く
- 協業先を3社探す:制作会社、Web会社、デザイン会社など、自分の工程を必要とする会社を調べる
- 最小の入口商品を決める:撮影だけ、取材だけ、デザイン修正だけなど、試しやすい範囲にする
- 対応基準を決める:一次返信、納期共有、修正範囲を言語化する
- 1社へ具体的に連絡する:「何でもできます」ではなく、相手の案件で不足しそうな工程を一つ提案する
営業件数の目標を立てる前に、相手が判断できる材料を揃える。これだけで、連絡の内容が「仕事ください」から「この工程なら手伝えます」へ変わります。
地方での営業は、信用の順番を設計すること
私の最初の法人案件は、飛び込み営業で勝ち取ったものではありませんでした。
小さな納品が公開され、制作会社との接点が生まれ、不足工程から現場へ入り、対応品質で役割が広がる。その経験とYouTubeで見えるようになった能力が、紹介と直接受注につながりました。
地方は市場が小さい分、一度の仕事が次の人へ伝わりやすい環境でもあります。だからこそ、名刺の枚数やSNSの投稿数だけを増やすのではなく、誰に見つけてもらい、何を確認してもらい、どの仕事から任せてもらうかを設計する必要があります。
まずは今週、過去の仕事を1件選び、「誰の、どんな課題に対して、何を担当し、どう使われたか」を1ページにまとめてみてください。それが、次の法人案件に向けた最初の営業資料になります。
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この記事の続き
この記事に書いたのは、私に実際に起きたことです。最初の案件をどう取るか、見積もりをどう作るか、どう断るか。その手順までは、この記事に書いていません。
記事は、私が何をしたかの記録です。教材は、あなたが明日やることの手順です。
そこだけをまとめたのが LOCALANCE BOOKS「受注の書(入門)」です。私が実際に使っている型をそのまま置いています。目次と中身は、このすぐ下から確認できます。
