取引先の9割は紹介です。それでも、断った紹介があります

取引先は20社ほど、体感で9割が紹介です。新規営業から始まった取引は数件しかありません。それでも紹介された仕事を断ったことがあります。紹介が生まれた実例と、断った1件、そのとき言われた一言を書きます。

取引先の9割は紹介です。それでも、断った紹介があります

取引先は20社ほどあります。そのうち、体感で9割が紹介です。

自分から営業をかけて始まった取引は、1割ほど。数件しかありません。

こう書くと人脈に恵まれた話に聞こえますが、実際は、紹介が生まれなかった現場のほうがずっと多いです。そのうえ、紹介された仕事を断ったこともあります。

この記事は、一度でも人から仕事を回された経験がある人へ向けたものです。紹介がどう生まれたか、そして1件だけ断った話を書きます。

紹介がまだ来ていない人へ

この記事は、紹介が来たあとの話です。まだ来ていない人が最初の1本をどう作るかは、別の記事に書きました。先にそちらのほうが役に立つと思います。

先に、数字の確度を書きます

9割という数字は、数えて出したものではありません。取引先を思い浮かべて、そのくらい、という体感です。20社というのも概数です。

正確な集計ではないので、そのつもりで読んでください。ただ、9割か8割かで話が変わるほどの記事ではありません。新規営業からの取引が数件しかない、という部分は間違いなく事実です。

紹介は、普通は生まれません

順番として、ここを先に書きます。

紹介は、頑張れば生まれるものではありません。私が入った現場のうち、次につながらなかったもののほうが多いです。

発注する側からすれば、いま頼んでいる人がいます。そこに割り込むかどうかは、こちらの熱意ではなく、相手にとって得かどうかで決まります。私も外注する側に回ればそう考えます。

だから、うまくいかなかったほうが普通です。紹介が来ないことを、自分の努力不足だと考えなくていいと思っています。

実際に紹介が生まれたときのこと

いちばん太くつながった1件を書きます。

きっかけは、知り合いのカメラマンの現場に入ったことでした。私が取った仕事ではありません。呼ばれて、手伝いに入った現場です。

では、その知り合いはどこからできたのか。最初はライブハウスでバンドの映像を撮っていただけです。

そこに、発注元の方がいました。その場で、カメラマンから紹介してもらいました。

繰り返し撮影に行く案件だったので、同じ現場に何度か通いました。3回目くらいに行ったあとから、発注元の方から直接メールが来るようになりました。

そこから、別の案件につながりました。最初に現場に入ってから、受注までは3〜4か月です。

いまも続いているかというと、継続案件ではありません。たまに依頼をもらう、という関係です。

声がかかった理由を、腕だとは思っていません

その現場で、私が特別うまかったとは思っていません。

判断されているのは、腕だけではないからです。言われる前に動けているか。頼んだものが、言ったとおりに返ってくるか。回を重ねるごとに良くなっているか。あとから提案が出てくるか。

「この人がいると楽ができそうだ」と思われないと、次の話にはなりません。作品が良いかどうかより、そこが先に来ている感覚があります。

腕が要らない、という話ではありません。呼ばれた現場で撮れなければ次はありません。

ただ、当時の私の技術は高くありませんでした。それでも繰り返し声がかかりました。だから、腕が足りないから紹介が来ないのだ、とは私には言えません。私がそうではなかったからです。

直接メールが来た時点で、確認を取りました

発注元から直接メールが来たとき、私は一度、そのカメラマンに聞きました。この話を受けていいですか、と。

カメラ機材ケースとメール画面のノートPC、白紙とペンが置かれた机

理由は単純です。私がその現場にいられたのは、その人が呼んでくれたからです。自分で取った現場ではありません。

確認しなくても、たぶん誰にも怒られませんでした。ただ、次にその人から声がかかるかどうかは別の話です。

紹介とは、その人が自分の信用を貸してくれることです。貸してもらったものを、黙って自分のものにするのは違うと思いました。

断った紹介があります

ここからが、この記事で書きたかったほうです。

紹介された仕事を、断ったことがあります。紹介してくれた人に悪気があったわけではありません。善意で、良かれと思ってつないでくれました。

ただ、話が始まってすぐ、こう言われました。

うちのお得意さんだから安くやってあげてよ〜

このとき私は、紹介されたのではなく、紹介したという事実のほうが使われていると受け取りました。

私を信頼して仕事を頼みたい、という話ではなく、こんな人を紹介したのだから今後もよろしく、という材料に見えました。相手に確かめたわけではないので、これは私の解釈です。

断ったのは、その言い方が失礼だったからではありません。この形で入ると、値段が最初から決まってしまうからです。会う前に「安く」が前提になっている。そこから戻すのは、私には無理でした。

正面から断ってはいません

断ったと書きましたが、正確ではありません。

私がやったのは、「機会があればぜひ」と言って、そのまま進めなかったことです。逃げた、と言うほうが近い。

かっこ悪い話ですが、避けるというのは、ひとりで続けるうえでかなり大事な技術だと思っています。正面からぶつかると、こちらの体力が先に尽きます。

逃げずに進める場合もあります。そのときも、まず見積もりを普通に出します。そのうえで、この金額では無理だと説明します。何にいくらかかっていて、どの工程を削れば安くなるのか。安くできない理由を説明するのは、値切りに抵抗することではなく、仕事の説明です。

紹介だから少し引く、はあっていいと思っています。ただ、引ける幅は思っているより小さいです。

そこをなんとか、と返ってきたら

説明しても食い下がられることはあります。そのとき私が動かすのは、金額ではありません。

値下げ要求に対する二つの対応と避ける対応を示す分岐図

1つは、次の話を持ち出すことです。今回だけの値引きにせず、次の案件とセットにする。今回引いた分より、2回目があるほうが嬉しいからです。ただし口約束にはしません。紙を交わします。そこを口頭で済ませると、今回安くしただけで終わります。

もう1つは、見積もりの中身を小さくすることです。金額を下げるのではなく、やることを減らす。渡すものが変われば、値段が変わるのは当たり前です。

やってはいけないのは、そのまま安く請けることだと思っています。

紹介で一度安く請けると、その金額が名前と一緒に残ります。あのとき、あの人の紹介でこの値段でやってくれましたよね。そう言われたら、こちらからは戻せません。1回の値引きが、その相手との定価になります。

どう切り出すかまでは書きません。相手も、その場の空気も違うので、私の言い方が誰かの正解にはならないからです。

それに、この2つが毎回通るわけでもありません。私がそうしている、というだけです。

紹介元の顔を潰すのでは、と思うかもしれません

断ったり逃げたりしたら、紹介してくれた人の機嫌を損ねるんじゃないか。そう思う気持ちは分かります。

ただ、それでこちらが疲弊したら意味がありません。

工程があって、できることとできないことがある。それを言うのも仕事のうちだと思っています。

それで関係が悪くなるようなら、その関係は続けるべきではない。私はそう思っています。

ひとつ補足します。受けるときと、流すときでは違います。

受けるなら、紹介してくれた人に一言いります。前に書いた確認の話は、そちらです。流すだけなら要りません。私が黙っていたのは、進めなかったほうだけです。

私が「機会があればぜひ」で流したときは、紹介してくれた人との関係に何も起きませんでした。気まずくなったわけでも、声がかからなくなったわけでもありません。1件がそうだった、というだけですが、書いておきます。

ただ、こう書けるのは、私にいま他の取引先があるからです。1件切ったら次が無い、という状態のときに同じことを言えたかというと、たぶん言えていません。切る重さは、いま何本抱えているかで変わります。

悪い人の話ではありません

念のため書きます。これは「紹介してくる人を疑え」という話ではありません。

人を紹介するのは、自分の信用を使う行為です。使ったぶんの見返りを期待するのは、自然なことだと思います。私自身、誰かを紹介するときに何も期待していないかと言われたら、言い切れません。

ただ、そうなっている場合は、こちらの条件が先に決まっています。それだけの話です。

いま、紹介の話が来たときに見ていること

あの一件から、見る場所が1つ増えました。紹介してくれた人が、その相手に何を期待しているか。

私に仕事が入ることを期待しているのか、私を渡したことで自分の取引が良くなることを期待しているのか。後者が悪いという話ではなく、後者なら値段の話がこちらの手を離れる、というだけです。

これを見分けられるようになるのも、能力のうちだと思っています。私も最初から分かったわけではありません。

この話が当てはまらない人

私の仕事は、現場に出て、同じ場所に何度も行く形です。3回通ったから直接メールが来た、というのは、通える仕事だから起きたことです。

在宅で完結する仕事の人に、そのままは当てはまりません。

もう1つ書いておきます。クラウドソーシングのようなプラットフォーム経由の仕事から、紹介や継続につながった経験は、私にはありません。音楽をやっていたころに使ったきりで、映像の仕事を始めてからは一度も使っていません。

顔を合わせない相手に、自分の働き方をどう見せるのか。そこは私には書けません。憶測で埋めれば、それらしい文章にはなります。ただ、それは私が確かめたことではありません。

今日できること

1つだけ。

直近で一緒に仕事をした相手を1人思い出して、その人の手間が自分のどこで減ったかを1つ書き出してください。

「良いものを作った」ではありません。相手の作業が、自分がいたことで具体的に減った場所です。返信が早くて確認の手間が減った、聞かれる前に出したから催促がなかった、そういう粒度です。

1つも書けなくても、腕が足りないという話ではありません。相手の手間という見方で自分の仕事を見たことがない、というだけかもしれません。

ここだけの話

紹介って言われると、それだけでありがたい話に聞こえるんですよね。実際9割が紹介なので、基本的にはありがたいです。ただ、全部がそうではない。「うちのお得意さんだから安くやってあげてよ〜」って、文字で見ると笑っちゃうんですけど、あれを言われる側になるとけっこう効きます。嗅ぎ分けられるようになるのも能力のうちだな、と思っています。これは本当に、要注意です。

この記事の続き

この記事に書いたのは、私に実際に起きたことです。最初の案件をどう取るか、見積もりをどう作るか、どう断るか。その手順までは、この記事に書いていません。

記事は、私が何をしたかの記録です。教材は、あなたが明日やることの手順です。

そこだけをまとめたのが LOCALANCE BOOKS「受注の書(入門)」です。私が実際に使っている型をそのまま置いています。目次と中身は、このすぐ下から確認できます。